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本について/読書について

「ことり」

kotoriogawa
ことり
小川洋子・著(朝日文庫)

小川洋子さんの作品を読むときはいつも、
どれもが特別 と思って、静かに丁寧に読み進みます。

なぜかというと、小川さんは
とても小さなものや、よく見ないと分からないもの
耳を澄まさないと かき消されてしまう音や言葉、世界の片隅にひっそりと暮らす人々、
うっかりしていると私たちが気付かずに
無視したり 通り過ぎたり 落っことしたり 踏みつけたり してしまうようなことを
静かに、丁寧に書いていらっしゃるからです。

「ことり」。

きっと、小川さんが書いてくださらなかったら、
”小鳥の小父さん”のことを
みんなが忘れてしまったことでしょう。

誰かに気づかせてもらわない限り、
人々は大事なことをすぐに忘れて次、次と
ずんずん進んで行ってしまうようです。

今回も、小川さんが「これ、落としましたよ」と
大切なものを拾って届けてくださったような
気がしました。
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クリスマスにはクリスマスストーリーを

2017christmasbook
「クリスマスの朝に ~キャンピオン氏の事件簿Ⅲ」
マージェリー・アリンガム/著 猪俣美江子/訳  (創元推理文庫)

ON CHRISTMAS DAY IN THE MORNING AND OTHER WRITINGS
by Margery Allingham

昨日のクリスマス当日は、
あいにくの強風と ちらつく冷たい雪のおかげで
仕事帰り お茶を片手に本を読み終えたいと
カフェを目指して歩く間に
すっかり凍えてしまいました。

(カフェのドアを開けた瞬間、眼鏡が真っ白に曇ってしまい・・・恥ずかしかった。。。)

クリスマスには、クリスマスを舞台にした物語を読むと決めていて
(ミステリ好きなので、大概ミステリです)
今年はこの1冊にしました。

しかしながら、タイトルになっている「クリスマスの朝に」の前に収録されているのは、
「今は亡き豚野郎の事件」・・・
”豚野郎(ピッグ)”って・・・すごいタイトル(笑)

こちらは、クリスマス時期のお話ではありません。
のどかな土地で起こった殺人事件。
”豚野郎”というタイトルと、最後に明らかになる狂気が印象に残りますが
やはり優雅で詩的な英国ミステリの雰囲気は魅力的でした。

そして「クリスマスの朝に」
”豚野郎”の事件が起こった、同じ地域で 十年以上あとに起きた
クリスマスの朝の事件を描いています。
少し切なく、思いやりにあふれたラストに、
ちょうどカフェで流れていたクリスマス・キャロルの一曲が重なりました。

最後には、アガサ・クリスティーによる
著者マージェリー・アリンガムへの追悼文も
掲載されています。

クリスマスが過ぎると、もう年末!当たり前ですが・・・
なんだか追い立てられるような日々ですが
皆さまどうぞ良いお年をお迎えください。

絶望のときに

今日は11日。

先日終了しました展示の会場の様子や
本・作品のご紹介をさせていただくのは明日以降にしまして
どうぞこちらを。。。

zatsuboudokusho
絶望読書  苦悩の時期、私を救った本
頭木 弘樹・著(飛鳥新社)

書店でひときわ目を引いたのは、
金ぴかの文字で大きく書かれた
「絶望」 「読書」 の文字。

思わず手にとってしまったこの本に、
私は思いがけず救われることになります。

個人的なこともあるので詳しくは書きませんが、
大震災の衝撃も含め 思い返してみれば、
この数年間、どうやら私は
(ほんの少しではあると思いますが)
「絶望」していたらしいのです。

この本を読んで、気がつきました。
自分の気持ちを分かってもらえているような文章を目にして、
涙がこぼれました。

小さい絶望、大きい絶望、人それぞれ 
感じ方や立ち直りまでの時間の長さも 様々だ、と
著者は教えてくれます。

大震災のような大きな悲しみや喪失から
今でも 立ち直れないという人も多いと思います。
今になって、体調を崩したり…という人もいることでしょう。
ほかにも
日常のちょっとした言葉の行き違いや失敗、
失恋、ペットロス、自分や身近な人の病気が
絶望につながっていたりします。

「悲しい時には、悲しい曲を。
絶望したときには、絶望読書を。」
この本の帯に書かれているコピーです。

絶望して、その中で倒れていてもいいのだと
悲しみに浸って泣き暮らしてもいいのだと
無理に立ち上がろうとしなくていいのだと

そして、今のこの気持ちを 分かってくれる本があるというだけで
人の気持ちは救われるんだということを
私は知ることができて
本当に良かったと思います。

今、絶望の最中にいる人だけでなく
絶望していなくても是非読んでみてほしい1冊です。

「火星の人類学者」「妻を帽子と間違えた男」

読書の感想が続きます↓
OliverSacksbooks
Left: Oliver Sacks/A man Who Mistook His Wife for a Hat
Right: Oliver Sacks/An Anthropologist on Mars:Seven Paradoxical Tales

左:妻を帽子と間違えた男
オリバー・サックス 著/高見幸郎・金沢泰子 訳(早川書房)
右:火星の人類学者~脳神経外科医と7人の奇妙な患者
オリバー・サックス 著/吉田利子 訳(早川書房)

サックス博士の本との最初の出会いは、
「色のない島へ」でした。何故か全色盲の人の割合が多いなど、
特有の風土病を持った島への旅の記録です。

「妻を帽子と間違えた男」
「火星の人類学者」は、
脳神経外科医であるサックス博士が出会った、
奇妙な症状・障害を抱えて一生懸命生きる患者さん達の姿が
描かれた、医学エッセイ集です。

1篇がそれほど長くなく、専門的な知識がなくても読めます。
というより、驚きと感動がたくさん詰まっていて、
私はあっという間に読んでしまいました。

医学のことはよく分かりませんが、
最近書かれた本ではないので、
今ではまたもっといろいろな症例があったり
原因について、予防や新しい治療についても
進歩があるのかもしれません。

が、それはどうあれ、この本の魅力は
そういった事柄とは関係ありません。

表題になっている
目は見えているのに正しく知覚できない音楽家や
自らを「火星の人類学者」と表現する自閉症の動物学者、

自分の体の感覚を失った若い女性、
幼い頃に離れたきりの故郷に執着し、写真のように記憶された街を描く「記憶の画家」・・・

脳の一部が損傷を受けたり、病気になったりすることによって現れた、
一般的には想像がつかないような奇妙な症状。
外の人間から見れば、それは「病気」や「障害」で
理解が難しいと思いがちですが
本人にとっては、それは現実で、
実際に感じられる真実で、
自分と切り離すことができないものであり、
その人が持つ「能力」のひとつでも
あるのだなぁと感じいることばかりです。

「妻を帽子と間違えた男」の中の
「水準器」という話に
私の好きな文があります。
(以下、本文より抜粋)

「・・・にわかに深く考え込んでしまった。身じろぎもせずに立っていた。
私はそんな患者をみるのが好きである。「発見」がおこったのだ。
びっくりしながらも、このときはじめて、何が悪いのか、どうすればいいのかを
さとるのである。
これこそ治療のはじまりなのだ。・・・」

…希望が持てる、やさしいことばだと思いました。
不自由な部分があっても人間は
工夫ができる、訓練して慣れることも、治療で回復する余地があるかもしれず、
その人らしく生きることは可能なのだなぁと
思いました。

この本で取り上げられている人たちは、このように
自分と自分の置かれた状況を
もがきながらも受け入れて、
何とかうまくやっていけるよう「工夫」を加えながら
生きています。

その姿に、勇気をもらえたり、
一見「普通」に見える人も
本当は、ひとりひとり
見ている世界/生きている世界は違うのかも…と考えさせられたり。。。

シンプルに言えば、「人間」て不思議だなぁ!
と感動の読書体験でした。

「ニューヨークの魔法のじかん」

久々に、読んで良かった!おすすめの本のご紹介です。
まずはこちら↓
NewYork,mahounojikan
Mitsuyo Okada/A Spellbinding Time in New York
ニューヨークの魔法のじかん
岡田光世 著 (文春文庫)

ニューヨーク在住の作家・エッセイストでいらっしゃる
岡田光世さんの人気シリーズの最新作です。

何年か前のブログでも、前作の中からご紹介したことがありました。

短いエッセイを順に楽しみつつ、英語の表現も学べてしまうという
ステキな本です。
通勤のバスや電車の中で・・ちょっと空き時間に・・待ち合わせに早く着いちゃった時・・
などにも♪少しずつ読めるのでオススメです。

私は、ニューヨークというと
「スタイリッシュな都会」「サクセス・ストーリー」「ちょっと危険?」…
など、ちょっと”近寄りがたい”キーワードやイメージが浮かびます。

でも、岡田さんの周りにはいつでも
やさしく、うつくしく、あたたかい出会いが訪れます。

それはきっと、そこがニューヨークであろうとなかろうと
岡田さんが、どんな人にでも 愛と尊敬 一生懸命で温かい気持ちを持って
接しているから・・・つまり、岡田さんの「魔法」なのでしょう。

その証拠に、岡田さんは
大震災の後、ボランティアとして東北の地を何度か
訪れてくださっていて、その「東北と出会う」編も
収録されています。
被災地にも、やさしい魔法をかけてくださって
岡田さん、ありがとうございます。


他人の反応は、自分を映す鏡のようなものだと
聞いたことがあります。
石を投げれば、相手も石を投げ返したくなる。
相手のことを考えて、受けやすいボールを投げれば
楽しくキャッチボールができる。
そんな感じなのかなと思います。
私も、やさしい気持ちのキャッチボールができるような人に
なりたいものです(反省)。


話が逸れますが、
いつも、本をご紹介するにあたっては、
その本によく似合う背景を なるべく探して
そこで写真を撮るようにしています。
今回のは、お気に入りの本の中の1ページより。
(たぶん、ブルックリン辺りの景色だと思うのですが)
さて いかがでしょう。。。